Profile
写真家
1979年札幌市生まれ。風景写真の撮影をする中、キタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになり、米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』のネイチャー部門において、日本人初の1位を獲得。撮影しつづけている様々な写真は国内外の広告などでも使用されている。2019年には、代表作『Fox Chase』のプリントが英国フィリップスのオークションにおいて27,500ポンド(当時のレートで約386万円)で競落されている。
カメラの画素数の増加によるデータ容量の増大、そして連写機能の進化による撮影枚数の増大。撮影した画像データの保管は写真を撮る全ての人にとって大きな課題となっている。動物写真家として活躍する井上浩輝さんは、撮影データの保存・管理にポータブルSSDをいち早く導入。日頃からSSDを愛用している身から、キオクシアから発売中の、「EXCERIA ポータブルSSD XS700」を使ったインプレッションを伺った。2mからの落下試験をクリアした耐衝撃性能(*1)、HDDと比較して圧倒的に高速な最大読出転送速度550MB/s・最大書込転送速度500MB/s(*2)を誇る「EXCERIA XS700」は、撮り手にとってどのようなメリットをもたらすのだろう。
*1 本体のみ。キオクシアの試験結果に基づくものです。本製品を高さ2mから自然落下させた後、正常に動作することを確認済みです。
*2 転送速度測定条件はキオクシアWebサイトの製品ページをご覧ください。
――現在、井上さんは月にどのくらいの撮影量でしょう。
スチール2TB、ムービー1TBほどでしょうか。プロジェクトが複数同時進行している場合、プロジェクトごとにポータブルSSDで管理するため、台数は増やしていかざるを得ません。1日だけの撮影ならば管理はしやすいですが、数ヶ月に及ぶプロジェクトもあるので、ひとつのポータブルSSDの中にまとめて管理していきます。それが海外の長期出張だと、壊れてデータが消えてしまう恐れもあれば、盗難や没収されることもあり得るので、必ずふたつのポータブルSSDに同じデータを入れ、異なる場所で管理するということまでしています。
――井上さんの場合、野生動物を追う作風上、連写をすることは多いと思います。撮影スタイルの面からもデータ量は増えるのではないでしょうか。
僕が使っているカメラは、いま1枚あたり70〜80MBほどのデータサイズです。そして1秒間に20~30コマの連写ができるので、1秒間連写をしているとその総量は1.5GBにもなります。撮影のチャンスが続けば続くほどデータは増えていきますよね。カメラの連写性能が低かった時代は、連写をせずに一撃必殺で撮ることが美徳とされていた時代もありますが(今もまだあるかもしれませんが)、連写ができるのであればしたほうがいい。だって、0.1秒後に何が起こるかわかるのは神様だけですから。僕は神様ではないので、愚直に連写をします。秒間20~30コマの連写をすると、その間に僕が予想もしていなかった表情や仕草を動物がしていることがあります。瞬きをする瞬間、口角を上げて笑っているように見える瞬間、おもしろい足運び、とか。大粒の雪玉が動物の顔に重なり合うことだってあります。これらは、連写をせずに"1シャッター入魂"のようなスタイルではなかなか撮ることができないものだと思います。最高の瞬間を撮るためには、持っている機材の性能を最大限活かしたいものです。ここで妥協やうぬぼれをしたくないのです。それを積極的に撮りに行きたいと思えば、大容量のメモリカード、バックアップするストレージ、つまりポータブルSSDは必須になってくると思います。
また最近では、テレビCMや航空会社の機内向けのコンテンツなど動画を撮影することも増え、4K60Pや4K120P、ときには8Kの動画などまで撮ることがあり、僕が扱うデータの量はどんどん大きくなっています。プロジェクトによっては自身でグレーディング、編集、音楽をつけてリリースすることもありますし、大きなプロジェクトの場合であっても、グレーディングまでをして、それを編集さんに渡すところまで受け持ちます。もう膨大な量の動画が手元にあるわけです。とてもHDDのスピードでは足りません。
――ロケの際のポータブルSSDの使い方を教えてください。
その日の撮影が終わった段階で、車の中か宿に戻り、PCを使ってポータブルSSDへとデータを移動します。ただデータをコピーするだけではなくて、Lightroom®のカタログをポータブルSSDの中に作って、セレクトと現像を始めてしまいます。出張中はそのカタログで作業し、自宅に帰ったところで母艦となるPCの中にあるマザーカタログに統合します。動画の場合は就寝時や食事中にプロキシを作らせておくことが多いですね。プロキシはPC本体の内蔵SSDに保存するとひっ迫するのでポータブルSSDに作っています。そして、ポータブルSSDごと編集さんやディレクターさんに渡してしまいます。
――HDD時代にはできないことでしょうか。
2011年頃からPCに搭載するストレージはSSDに切り替えました。撮影をしたらデータを保存し、カタログを作るという手順は昔も今も変わりませんが、昔は外付けストレージはHDDでしたから、作業時の速度の面からカメラの小さな液晶でセレクトだけはやり、Lightroom®のカタログはPCの中に作ることが多かったです。
――ポータブルのストレージをHDDからSSDに変えたきっかけは?
2016年だったでしょうか。PCで使っていた2.5インチのSSDがひとつ余ったんです。それをたまたまHDDのケースに入れてみたのですが、これは速いと。それ以降、自作でポータブルSSDを作るようになりました。自作SSDを海外ロケに持って行ったとき、みんな驚いていましたね。当時、USBはすでに3.1まで出ていたのに、自作用の箱はUSB2.0にしか対応していなくて、せいぜい200MB/s程度しか速度は出ないので不満がありました。そうこうしているうちにUSB3.1対応のポータブルSSDが発売されるようになり、とてもありがたかったですね。体感としては、HDD時代の2〜3倍くらいの速度。自転車と飛行機くらいの差があると思います。
――ポータブルSSDはHDDと比べて耐衝撃性の高さも特徴です。
HDDを持ち歩いていたときは、頑丈なスーツケースの中に入れるときも、着替えの洋服を何重にも巻いて持ち歩くくらい注意してもデータが飛ぶんじゃないかと怖かったですが、SSDは自作ケースをやめて販売品のポータブルSSDが登場してからは、無造作にカメラバッグに突っ込んでおいても怖くないので、利便性はかなり上がったと思います。またノートPCと接続するときも、HDDはPCにコードでぶら下げることはできませんでしたよね。水平に置いて動かないようにするのが当たり前。でも、ポータブルSSDはぶら下げても大丈夫だし、傾いた状態で置いても問題ないですからいいですよね。
――キオクシアの「EXCERIA ポータブルSSD XS700」の快適さはいかがでしょう。
HDDしか使ったことがない方からすると天国のように感じるはずです。僕は写真教室をやっていますが、受講者の方々を見ると、まだポータブルSSDをお持ちではない方が圧倒的に多いですね。SSD XS700については、速度以外にもPCのバッテリーの減りが少ない、私の感覚では音がほとんどしない、さほど熱を持たないなど、良いところだらけです。
――いま現在は何台のポータブルSSDが稼働中ですか?
バッグの中に入っているものだけで5台ですね。さらにデスクトップPCにも2台繋がっていますし、これら以外にもまだまだあります。この「EXCERIA XS700」、何が貼ってあると思いますか? 滑走路のシールなんです。航空会社の撮影に使っていて、どのポータブルSSDがどのプロジェクト用かをすぐにわかるようにしています。複数台使うという方は今後も増えると思うので、識別するためのシールを付けるとか、カラーバリエーションを作っていただくとか、そんな工夫をしていただけるとありがたいですよね。例えば、最近はM1チップ搭載のMacが話題となっていて、採用されているUSB「Thunderbolt™ 3」ネイティヴのポータブルSSDは速度がとても出ると評判です。いずれ接続はUSB4.0へと移行していくと思いますが、キオクシアさんのポータブルSSDには、いち早くUSB4.0を採り入れていただくと良いかもしれませんね。そのときは、一定数いるMacユーザーはデザインにもこだわると思いますから、黒の筐体だけでなくシルバーの筐体のものも発売するとユーザーに喜ばれると思います。
――キオクシアのSDメモリカードなどもお使いだと思います。それは信頼性が高いからでしょうか。
もちろんそう。安心感が違います。キオクシアの製品が原因のトラブルに見舞われたことはありません。他社のカードで何度も経験していることが起きないんですよ。翌日、あるいは1ヶ月後には速度が出なくなるというような怪しいSDメモリカードにありがちなことも起きません。キオクシアに対する信頼はとても厚いですね。
僕はとある信頼する方に、ポートフォリオ1万枚とLightroom®のカタログを保存したSSDをバックアップ用として預けていて、半年に一回はデータを更新しつつSSDを取り替えるということをしており、データのバックアップ対策も万全です。撮影データの管理は、そのくらい大切なことなんです。
――極寒の中でのロケでの「EXCERIA XS700」の動作は問題ありませんでしたか?
大丈夫でした。作動音が静かで音からしてHDDとは異なる感覚。回転体のあるHDDは寒いと音が大きいとか、怖くなったりするんですよ。
――ポータブルSSDを導入することはメリットばかりですね。
コストが若干かかるということを考慮しても、余りある性能だと思います。ただし、HDDはHDDで必要なフェーズがあると思います。僕も12TBや14TBのHDDが並んで入っている箱を日々運用していて、その中には今まで撮ったデータの全てが入っています。大容量のデータをじっくり保存するにはHDD。いまだにHDDは必要なんです。でも、せいぜい数百GBとか1TBのデータを管理するのであれば、ポータブルSSDという存在は最も安定していて、壊れにくく、取り回しがよいという、何拍子も揃った製品だなと思います。HDDをSSDに変えたところでいい写真が撮れるわけではないんですよ。だからお金をかけにくいんです。でも、就寝前のデータコピーが、いままでの1時間30分から10分に短縮できたら、そのぶん多く眠ることだってできますし、1時間以上も撮影を長くおこなうこともできるじゃないですか。時間が作れるということは、撮影のチャンスが増えるということ。長い目で見れば、「いい写真」を撮れる可能性が増えるということなんですよね。ぜひ、多くの方にポータブルSSDを使っていただき、たくさん素晴らしい写真を残していただきたいです。
※Macは、米国およびその他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。
※Lightroom は、Adobe の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※Thunderbolt™ 3 は、Intel Corporationまたはその関連会社の商標です。
その他記載されている社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として利用している場合があります。
※本記事の内容は個人の使用に基づく感想です。
日常生活でストレージの役割はとても大切です。メモリやSSD分野で定評ある技術を持つキオクシアは、信頼性と品質を兼ね備えたメモリ製品と、お客様の立場に立ったカスタマーサービス体制で皆様のデジタルライフをサポートします。
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